今年度入試の素材文についての考察です。続きものにしてしまったので、あまり間隔をおかずに書こうと思ったのですが・・・

 それでは、前回の甲陽学院中学につづいて、真打ち登場です。

 灘中学です。

 今年は、算数の難化が大きな話題となりました。当教室の受験生に入試の感想を聞くと、私が国語の先生であるにもかかわらず算数の話題が真っ先に出てくるほどです。国語の話題を探して、1日目の「作文」がやっと出てくるといったところでしょうか。

 入試分析はまたの機会にしますが、 今年1日目で「作文」が出題されたから、100字程度の作文の練習をしておいた方がいいです、というベテラン灘中特訓国語担当者はいませんよね・・・
 あの問題はこの素材文だから出題されたものであって、いわゆる自由作文の問題ではないです。問題文に「作文」と書かれていますが・・・

 話がずれるのでここらでやめておきます。

 
 1日目大問一は、沢木耕太郎「銀河を渡る 全エッセイ」です。

 

銀河を渡る 全エッセイ

 入試問題を見るとき、私は必ずと言っていいほど、出典を確認します。今年は出典を見てまず発した言葉が「おおっ、深夜特急」でした。「バックパッカー」に憧れを抱いたのが若い頃・・・もしかしたら、灘の入試問題作成者も・・・

 この本の刊行時期を見て驚き、そして、色々と考えさせられました。

 2018年9月刊行です。

 なんと入試4か月前に刊行された本からの出題です。過去25年分のエッセイ集なので、この本から素材文を選んだとは限りません。仮に9月で素材文を決めて問題作成をしていたとしたら、なかなかすごいことだと。

 大手塾の場合、模試の作成から印刷までを管理する担当者がいます。塾によって違いますが、模試作成スケジュールは、3か月程で原稿提出から検討・チェック・印刷の流れでしょうか。

 私も模試を作成する立場でした。基本的に締め切りは守る方の人間だったと自分にとって都合のいいように記憶しています。ちなみに、すこしでも作成締切を遅れると、矢継ぎ早に催促がきます。これでもかと。これでもかと。(誇張です。すみません。)

 今年の灘1日目の場合、大体の感覚で計算すると、2か月強で検討会・チェック・印刷の流れでしょうか?それとも12月ぎりぎりの時期での印刷でしょうか?個人的に気になります。学校なので、試験作成工程を管理される方はいないと思いますが、もしいたら・・・

 2日目ほど文章の文字数が多いわけでないので、1日目は比較的短時間で作成できるかと思います。(私が灘中模試を作成していた当時の感覚です。)

 ただ、入試問題なので慎重かつ的確な検討会が国語科の先生方によっておこなわれているので、やや期間は延びるかと。

 以前、学校関係者にお話を伺ったとき、ある年の2日目詩の問題で若手の先生が作った問題が良かったのでその問題に結局採用したという話を聞いた記憶があります。(つまり、客観的事実として候補の問題が複数あったということです。)
 そこから勝手に連想して、一旦、夏休み明けに一通り作ってあったが、後だしでこの大問一が提出されて、問題を差し替えたかと勘繰るほどの作成時期です。

 と、どうでもいい空想を色々としていました。すみません。

 そんな空想をしながらも、甲陽中学・東大寺中学と同様、素材文の出版時期から「矜持」のようなものを感じました。さすが、全国に名がとどろく灘中学です。

 (同じ最難関中学と言われる学校で、前年出版された新しい素材文どころではなく、かなり古い素材文を採用しているのがありました。塾のテキストを逆に「的中」しようとして入試問題を作成したのではと勘違いしたくなる学校も・・・。)

 こういった前年に出版されたばかりの本を素材文として採用する姿勢の中学は関西でも数少ないと感じ、ふと関東の中学はどうなんだろうと思い調べてみました。