新型コロナウイルス禍を前提とした物語が第一話に掲載されており、最新の物語文という印象を受けます。「小説 野生時代」2020年8月号から2021年8月号まで掲載されたものと書き下ろし1本を合わせたものを編集して今年9月に刊行されたものなので、今年度中学入試の素材文として採用されているかもしれません。
たとえば、P61の「送り火のあとで」は読みやすく、重松清さんらしい登場人物の心情の描き方をされており、問題として作成しやすいです。また、この本に掲載されているすべての物語に当てはまる話ですが、短編なので全文が短く、入試問題の素材文として最適かと。
11の短編のうち一つが、どこかの塾さんで模試の素材文に採用されるところがあるかなと思います。
模試の素材文については、確かに塾さんによってバラつきがありますね。
生徒の模試を見たとき、いい素材文で問題作成されているなあと感心させられる塾さんがあります。生徒がその模試をきっかけに、素材文に採用された本を購入して読むことさえあります。
一方、私なら採用しない素材文を使って問題を作成している塾さんがあります。主観的なものなので、価値観の違いで片づけることができます。ただ、この模試作成者は近年の入試問題を研究していながら、なぜこの素材文を選んだのかと疑問に思うときがたまにあるのですが・・・
何はともあれ、秋の夜長にお薦めの一冊です。是非、読んでみてください。